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矯正医会だより

2024年3月21日 「マウスピース矯正について」
筆者:佐藤 元彦

 昨年12月にテレビ朝日の記者よりマウスピース矯正について、現在治らなかった患者さんから集団訴訟が起きており、その為信頼できる矯正歯科医の方から話を聞きたい、との取材申し込みが友人の医療関係者の方を通して私にありました。

 マウスピース(アライナー)型矯正歯科治療とは、一般的には透明なプラスチック様の可撤式の装置を用いて行う為、矯正していることが目立たず、また必要に応じて装置を取り外すことも出来る為、患者さんからは受け入れやすく、また術者の歯科医にとっても初診時にとられた模型から技工所等でプログラミングされ、出来上がった数十枚のプラスチック様装置を順番に取り換えていけば治るはずの装置ということで扱いやすく、国際的にも広く行われている矯正歯科の治療法の一つであります。その為、矯正歯科の技術も学識もあまりない歯科医が、装置が売れれば儲かるという悪徳業者の甘言に乗って矯正歯科治療を始めてしまうという例も少なからずあるようです。

 しかしながら実際にはこのマウスピース型矯正装置には適応症があり、この適応症は限られていて、適応症でない歯並びや咬み合わせの患者さんに使っても治らない筈です。
例えば私の矯正歯科クリニックでマウスピース矯正の適応症として診断され開始された患者さんは全症例の5%程度です。従って術者である歯科医もまずマウスピースで治すことが出来る歯並びかどうかの診断がつけられるか否かが大切です。また人間の体、特に口腔内は複雑ですので、初診時の歯の模型だけで出来た装置は途中でそのプログラミング通りに歯が移動していかない場合も多く、その場合には再度装置を作り直すか、他の治療方法に切り換える必要もあります。
テレビ朝日で実際に放映されたのは1月6日早朝でしたが、この時は治らなかったという患者さんの訴えと共に、歯科クリニックが関連する運営会社が患者さんに矯正歯科治療モニターになることで、治療費が後日戻ってくるというおかしな詐欺的商法を行った為、被害が拡大したと報じていました。金額的にも巨額な被害が出ているということで驚きましたが、私達善良な矯正歯科医に対しても不信感を持たせかねない事件と言えます。

 渋谷区で開業されている先生方には是非このような事件の加害者の一人にならないようお気をつけ頂きたいと思う次第です。マウスピース矯正治療を施術されたくなった場合は、少なくとも適応症の診断がつくまで矯正歯科の学識、並びに技術を修得された上で開始して頂きたくお願い申し上げます。

 以上、渋谷区歯科医師会の先生方から犠牲者がでないよう、一言書かせていただきました。

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